宮沢賢治のなめとこ山の熊

宮沢賢治の『オツベルと象』を久しぶりに読みたくなって本棚を探してみたらどうしても見つからなくて、『なめとこ山の熊』を読んでみました。

岩波文庫の『風と又三郎他18篇』に入ってる話のひとつなんですが、学生の時に古本屋で買ってから18篇中5篇くらいしか読んでなかったらしく、『なめとこ山の熊』をちゃんと読んだのは今日が初めて。


なめとこ山の熊のことならおもしろい。
から始まるこの話。

猟師と熊の話なんだけど、すごくいい。
猟師もいいし、熊もいい。
まあ猟師と熊の話だから、殺したり殺されたりする間柄なんだけど、死があまりにも淡々と描かれていて、かえって怖いくらいに透き通ったような物語です。

もうこのへんネタバレだから、なめとこ山の熊じっくり読みたい人はワープして頂いて…

で、猟師の小十郎は熊を撃って皮と肝を売って生きているわけです。でも熊たちはそんな小十郎のことがけっこう好き。小十郎いい人なんです。
ゴリゴリのおやじさん。本当は熊撃ちなんてしたくない。

でも年老いた母親と残された孫達のために、猟師は猟師の仕事をするしかない。

あるとき、銃を向ける小十郎にむかって熊がいいます。

おまえは何がほしくておれを殺すんだ


ああ、おれはお前の毛皮と、胆きものほかにはなんにもいらない。
それも町へ持って行ってひどく高く売れるというのではないしほんとうに気の毒だけれどもやっぱり仕方ない。
けれどもお前に今ごろそんなことを言われるともうおれなどは何か栗かしだのみでも食っていてそれで死ぬならおれも死んでもいいような気がするよ


熊と小十郎は同じ世界に住んでいて、別な世界から搾取されている。
別な世界に搾取されるために互いに命のやりとりをする熊と小十郎の会話は、切なくてやるせないものがあります。

熊はいいます。

もう二年ばかり待ってくれ、おれも死ぬのはもうかまわないようなもんだけれども少しし残した仕事もあるしただ二年だけ待ってくれ。
二年目にはおれもおまえの家の前でちゃんと死んでいてやるから。毛皮も胃袋もやってしまうから


2年後、熊は約束を守って小十郎の家の前で死んでいました。


そしてある日、小十郎にもそのときがやってきました。
そのとき小十郎は、
「熊ども、ゆるせよ」
と思いながら死んでいく。青い星のような光をそこいらいちめんに見ながら。

宮沢賢治が光のドップラー効果を知っていたというのは本当だと感じます。急速に近づいてくる光は、いつも青くて美しい。
青くて、透明で、すごく綺麗だけど、悲しく震えているように見える。

やっぱ上手く伝えられそうにないから、気になる人は読んでみてください。
なめとこ山の熊、良かったです。


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なめとこ山の熊 (ミキハウスの絵本)

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